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【5インチゲージ制作・第3回】5インチゲージの車体、手作りしてみた! 木材から「乗れる」鉄道模型が生まれるまで ~電動化編~【体験レポ】

  • 執筆者の写真: 部長
    部長
  • 2024年10月22日
  • 読了時間: 9分

更新日:2024年10月27日

こんにちは!

奈良高専機械研究会がお送りする5インチゲージ(ミニSL)制作、第3回です。

↓ 第1回はこちら! ↓




↓ 第2回はこちら! ↓




10月に入ってから、部室棟を吹き抜ける風も涼しくなり、活動しやすい気温となってきました!(^^)!


18時を過ぎると、部室前の広場は真っ暗なので少し寂しいですが・・・😓


それはさておき、5インチゲージ(ミニSL)制作・第3回となる今回は、機関車の「電動化」についてご紹介します!



と、その前に・・・・

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【奈良高専 機械研究会からのお知らせ】

奈良高専では、10/26(土)・10/27(日)の2日間にわたり、入試説明会が開催されます。

(詳しくは、奈良高専公式HPの情報をご覧ください)


当日は、クラブ活動公開も実施されます。昼食・休憩時間を利用して、普段のクラブ活動の様子をご見学いただけます。


機械研究会も両日、活動の様子を公開します!


部室前で5インチゲージを制作したり、試験走行させることを予定しています。

部員一同お待ちしております。

機械や鉄道に関して特に興味のない方も、お気軽にお越しください!

5インチゲージに乗る3人の男子高専生
部員による試運転の様子😎 (部員は他にもたくさんおります)

●中学生および保護者の方は見学のみ可能ですので、5インチゲージへの乗車、体験入部等はできません


●雨の場合は、部室棟の中で5インチゲージを展示・制作しますので、当日のお天気に関わらず、ぜひお越しください! 


●雨の場合は部室棟の床が滑りやすくなっておりますので、足元にご注意ください。


以上、お知らせでした!

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さて、いよいよ本題へ。

前回までの復習・・・

第1回で台枠(車体の重みを支える下部構造)を制作し、第2回で床板の制作、台枠との接合、連結器(の一部)の取り付けを行いました。



電動化計画の概要

機械研究会が制作する5インチゲージは、機関車と客車の2部分に分けることができます。


機関車は動力、つまりモーター(モータ)を持ちますが、客車は機関車に引っ張られるだけで動力を持ちません。(付随車 -ふずいしゃ- といいます。)


今回の電動化計画では、機関車に動力源である「モーター」と動力を車輪に伝えるための「チェーン」(自転車のチェーンと同じです)を取り付け、エネルギー源である「バッテリー」やスピードを調整する「コントローラー」を搭載します。


上記の装置を一通り追加したら、それぞれを配線して繋ぎます。



電動化のための部品・道具

①モデルニクス社製キット内の物

●モーター

●チェーン

●コントローラ

●ヒューズ

●減速歯車(ギヤ)

●M6ボルト(ネジ)などの金具

●モータ固定具

●コネクター


②別途準備する部品

●自動車用バッテリー(12V)

●バッテリー充電器


③道具

●電動ドライバー

●ノコギリ

●六角レンチ

●ヤスリ



いざ、電動化

①モーターブラケットを取り付け、モーターをはめる

さて、電動化計画の主役はやはりモーターでしょう。

そのモーターはどこに付けるのでしょうか?


普段乗っている実際の電車を想像してみてください。


こんな感じの、床下のごちゃごちゃと装置が付いている部分にありますね。

走行時、モーターの音が足元から響いてくる感じは、なんとなく分かるかと思います('ω')ノ

273系電車(新型やくも)先頭車の床下装置
電車の床下部分(床下装置)

※ただし、この写真に写っている部分に「モーター」は無いみたいです。

※写真は部員撮影


5インチゲージにおいても、モーター取付位置は同じ床下です。


車輪を回すモーターを床下に取り付けるにあたり、まずはそれを固定する部品「モーターブラケット」の取り付けが必要です。

5インチゲージ用モーターブラケット
モーターブラケット

モーターブラケットは、(5インチゲージに使う物の中では)比較的大きな金具です。


大きな穴に、モーターの端部(回転軸が出ている部分)をはめ込みます。

写真に見えている小さな穴は、ネジで床板に固定するときに使います。


②歯車類の取り付け

次に、モーターの軸に歯車類(アイドラー、カラー、アイドラーリング)を取り付けます。


この歯車は、「減速機」といいます。

形状と大きさは、自転車のギアと似ています。


実は、このギアは無くても良いのですが、取り付けることでモーターの力を大きくすることができます。(ただし、最高速度は低くなります)

自転車でも、軽いギヤに入れると、ペダルを漕ぐ力は小さくて済みますが、スピードを出そうとすると大変ですよね(;´Д`)


③チェーンの取り付け

続いて、モーター・歯車の回転運動を車輪に伝える「チェーン(ローラーチェーン)」を、モーター側の歯車と車輪側の歯車を繋ぐように通します。


モデルニクス社製のキットに含まれるものは、一般的な自転車用のチェーンよりも少し細いかな?といった程度の幅でした。


④モーターブラケットの取り付け

ここでモーターブラケットを固定します。


チェーンをピンと張った状態で、

●モーターの回転軸は車軸と平行か?

●チェーンは線路と平行か?

ということに気を遣いながら、5インチゲージシリーズでは毎度おなじみ、M6ネジでモーターブラケットを固定していきます。


もちろん、下穴をあけることを忘れてはいけません('ω')


5インチゲージの車輪とモーター、チェーン
モーターを取り付けた様子

⑤配線穴をあける

モーターからは、コントローラーに繋ぐ用のコードが伸びています。


制作者側での配線作業といえば、モーター~コントローラー~バッテリーを付属のコードで繋いでやるだけですので、特に難しい点はありません。

(一部、圧着端子やハンダ付けが必要になったりはします)


さて、床下にあるモーターからのコードをコントローラー(運転席に設置予定)からのコードと接続するため、車両の床板に穴をあけます。


機構担当の部員がドリル等をうまく利用し、四角い穴をあけてくれました。


5インチゲージの床板と配線穴
床板にあけた配線穴からコードを伸ばした様子

⑥バッテリーを準備する

バッテリーは乗用車用のもの(12 V、容量不明)を使用します。

(おそらく38B19Lとか、その辺りのモノだった気がします。(GS YUASA製))


GS YUASA製自動車用12Vバッテリー
搭載した自動車用バッテリーとコントローラー

バッテリーはかなり重いので、車両床板に載せるだけで一苦労です(・´з`・)


⑦配線(接続)を行う

コントローラーから出ているケーブル、バッテリーとコントローラを繋ぐケーブル、モーターから出るケーブルを接続します。


当然ながら、バッテリーから供給される電力をコントローラーを使って調節することでモーターの回転を制御するわけですから、配線の順番は

バッテリー(電気を供給)-コントローラー(電気を調整)-モーター(電気を使用)

というように、コントローラーをバッテリーとモーターの間に挟む形になりますね。


⑧モーターを回してみよう!

さあ、これで電動化にあたっての作業が終わりました!


ではいよいよ、試運転!といきたいところですが、線路に載せる前に、コントローラーのつまみをひねって、モーター(車輪)がちゃんと回るか目で見て確かめなければなりません。


つまみを回してみましょう!!

果たして、車輪は回ってくれるのでしょうか!?


ドキドキ・・・


・・・・


・・・・


回りました!!(安堵の声)

良い音ですね!!(伝わらない)


●「機械研究会」なので、たまには機械(装置)にまつわる話を書いてみる・・・?

(少し難しい話なので、興味のある方以外は飛ばしてもらっても大丈夫です。)


モデルニクス社製のコントローラーは、FETチョッパ制御というシステムを搭載しています。

FETというのは、電界効果トランジスタ(Field Effect Transistor)という、電流を制御する素子(電子部品)のことです。


FETはドレイン・ゲート・ソースと呼ばれる3つの端子を持ちます。ソース-ドレイン間に流れる電流(電子の量)は、ゲート部に掛かる電圧(電子の勢い、力)によって決まります。

いつもの工作に比べると、ちょっとムズカシイ話ですね(-_-)zzz


チョッパ(chopper)は、切り刻む(chop(チョップ🫲)する)もの、という意味です。スイッチ(手で切り替えるようなレバーのスイッチではありませんよ)のON-OFFを高速で繰り返すことで、電流を切り刻みます。


ONなら電流が流れ、OFFなら電流は流れません。


この「電流が流れる時間(つまり、ON)」と「電流が流れない時間(つまり、OFF)」の比を徐々に変えていくことにより、モーターへ流れる電流(電圧)の大きさを調節します。

チョッパ制御は、直流電圧を別の直流電圧に変換する「DC-DCコンバータ」の一種です。(DCというのが、直流の意味です)


つまり、FETチョッパ制御は「電界効果トランジスタを用いて電流を切り刻み、モーターへ流れる時間(=電流)を調節することで、モーターの回転(つまり、電車のスピード)を制御する仕組みである」といえます。


チョッパ制御は、熱に起因するエネルギー損失が少ないという特徴がありますが、一方で高速スイッチングによるノイズ発生が見られる、というデメリットもあります。


チョッパ制御というのは、昔は「エコな方式」として鉄道業界でも注目され、実際の電車でも複数採用されましたが、必要となる素子が効果であることや、構造が複雑になることなどから、現在では別の技術(インバータ制御)に取って代わられています。


201系電車と河内堅上駅ホーム
チョッパ制御の採用例 (写真は部員撮影)

ちなみに、ブログを書いている者は電子制御工学科ですので、木材や金属加工云々の話よりもこの辺りの回路に関する話の方が好きだったりします。


やはり、コントローラー本体からも「プーン」という高いパルス音が鳴ります。 モスキート音ともいえるでしょうか。

(後日、モーター音を収録した音声ファイルをアップロードします。)


→すみません。やっぱり上手く録音できませんでした。

代わりといってはなんですが、モーターの音はこちらです。 (ギャラリーページ内の音声ファイルを再生してお聴きください。)


この音鳴りは特に低速域で顕著です。


ただし、気になるほどの騒音ではありませんし、「心地よい音」「かっこいい音」という部員もおります。


⑨試運転だ!!

モーター、車輪が回ることが確認できたので、線路に載せて走らせてみましょう!


バッテリーとモーターを積んだ車両は、意外と重いです(;´Д`)

この先、機関車の形にするために屋根や側板を載せるとなると、ますます重くなりますね・・・クレーンが欲しい・・・


5インチゲージ車両の床下機器
機関車の床下装置類

さて、試運転の結果ですが、脱線したり不穏な挙動を示したりすることもなく、無事に走行できました。


感想

電動化したことで、やっと5インチゲージ車両として最低限のラインに到達したように感じられます。


実際は、車体の組み上げ、塗装、ギミック制作・実装、車両や線路の連結作業・・・などなど、まだまだ沢山の作業が残っているわけですが(-_-;)


ともかく、今回は歯車などの機構やモーターの制御について部員で学習し、概ね「機械を研究」できたといえる内容になったので良かったと思います。


また、今回は時間の都合上取り組めなかったコントローラーの低騒音化など、各種機構に関する研究は、これからよく勉強をしたうえで、今後の課題としたいと思います。



次回予告

第4回は、客車の車体(座席)製作についてご紹介します。


乞うご期待!



※作業時は保護メガネを着用し、周囲の状況を確認するなど安全に十分配慮しています。


注意:機械研究会および機械研究会が運営するブログは、できるだけ正確な情報を提供できるよう努めておりますが、掲載情報の正確性、完全性、信頼性、有用性を保証するものではございません。機械研究会のブログに掲載された情報の利用によって生じた怪我等のトラブルや損害賠償問題等について、当団体は一切の責任を負いませんのでご了承ください。

 
 
 

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